◆ 組 織 |
社団法人全国学校図書館協議会(全国SLA)に加盟する60の各都道府県学校図書館研究団体の1つとして岩手県学校図書館協議会は昭和25年(1950年)に設立されました。 学校図書館の学習情報センター及び読書センターとしての充実と発展を図り、教育目標の実現に寄与することを目的として、この趣旨に賛同する岩手県内小・中学校の加盟校並びに岩手県高等学校教育研究会(高教研)に加盟する高等学校をもって組織され、学校会員制で運営されております。 平成18年(2006年)現在、700校を越える学校が加盟しており、小・中学校は19の地区(支部)に、また、高等学校は高教研図書館部会に所属して、県下に20地区(事務局)体制で組織され、県下のほぼ全市町村の全ての学校が加盟しております。
規約により、会長、副会長(校種別各1名)、理事(各地区協議会長および高校部会長)、常任理事、会計監事などの役員が選ばれ年1回の理事会(総会に代えて開催)の議決を経て運営が行われています。会の事務及び事業を行うために事務局と事業部(読書感想文コンクール・読書感想画コンクールの2部)を設けています。 |
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◆ 活動内容 |
本協議会の目的を達成するために、学校図書館の利用・活用の促進と情報活用の推進、読書活動の推進を図るなど、以下の活動及び事業を行っております。
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1. |
図書館運営に関する研究会・講演会・講習会などの開催 |
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2. |
岩手県読書感想文コンクール及び岩手県読書感想画コンクールの開催 |
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3. |
読書感想文集の発行 |
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4. |
図書館教育普及のための活動(優良図書の選定、紹介等) |
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5. |
地区学校図書館協議会との連絡提携 |
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6. |
全国及び東北地区学校図書館協議会との連絡提携 |
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7. |
各種関係団体との密接な連携 |
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8. |
その他 |
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◆ 歩 み |
戦後間もない昭和22年に教育基本法や学校教育法が施行され、戦後の新教育が始まった翌23年に『学校図書館の手引き』が刊行されました。これを受けて、学校図書館の意義や役割を理解してもらい、その活動を盛んにする研究を進めようとする研究グループが盛岡に作られました。岩手県教育委員会の赤坂暹氏、武蔵巍氏、下橋中学校の岩淵信明氏、幾田徳弥氏、岩手大学附属小学校の伊藤正吉氏、杜陵高校の高橋三郎氏、県立図書館の笹島弘夫氏の7名がその最初のメンバーでした。月1回の研究会をもち深夜にまで及ぶ熱のこもったグループ研究を通して岩手県SLA結成への基礎が作られていきました。 第1回全国大会が開催された昭和25年7月の東北大会(福島大会)にこのグループのメンバーが参加したのをきっかけに県組織を結成する願いが強まり、岩手大学の協力を得て『第1回学校図書館実務研究大会』が開催されました。研究会の内容は、高橋康文教授による「新聞の利用」と岩手大学図書館事務長による「分類」、高橋三郎氏(杜陵高校)による「目録」の3つの研究発表であったそうです。
この研究大会の成功により、県SLA結成への本格的な組織作りに着手し、福島県の東北大会参加から僅か4ヵ月後の昭和25年11月8日に岩手県学校図書館協議会結成大会を開催し、岩手県図書館協議会(岩手県School Library Association)が結成されました。
(1)第1回県大会の開催からの黎明期
岩手県SLAが結成された直後、赤坂氏、高橋氏、武蔵氏、幾田氏が中心となって、多くの先生方に学校図書館の役割を理解してもらうために、学校図書館と直結した利用指導や読書指導の公開授業が必要であると考え、第1回県大会の開催計画が進められました。 昭和26年12月3・4日の2日間に渡って附属小学校を会場に学校公開研究会として開催されることが決まり、附属小学校の先生方の協力を得て公開授業の研究会を開催するばかりではなく、参加する県下の先生方の参考になる図書館を見ていただこうと開架式の書架を注文して図書館の改造にも着手しました。研究会の会場になった広い体育館が参加者であふれ、熱気につつまれた研究協議が行われるなど成功裡に終了することができました。その後、県SLAの活動は順調に展開され、昭和28年9月4・5日には東北地区大会が開催され、盛岡の下橋中学校を会場に約500名の参加がありました。県SLA結成から日の浅い時期の開催にもかかわらず大きな成果を収めたのは、本協議会の組織の並々ならぬ力量を示していると言っても過言ではないと思われます。 昭和31年に第3回県大会を開催し、これ以降年1回の大会開催が定着しました。このころ実務講習会も県内20会場で開かれ、盛況をきわめました。昭和34年の第6回県大会と昭和48年の第20回県大会は東北地区大会を兼ねて開催され、このころから「生涯学習」というテーマが課題としてあらわれてきました。
(2)全国大会開催に取り組んだ隆盛期
昭和48年に第16回東北地区大会(第20回県大会)が開催されたおり、大会運営を視察に来県した全国SLAの佐野事務局長から全国大会開催について打診されました。これを受けて昭和51年の5月と10月に2回の理事会を開き、全国SLAの佐野事務局長および岩田事務局次長から説明を受け、大会開催・運営に関わる課題について協議検討を続けました。その結果、昭和52年1月に第3回の理事会を開催し「岩手県の学校図書館の水準を上げる」「組織の拡大充実を図る」と目標を掲げて、全国大会開催受諾を正式に決定しました。 昭和55年度に開催された第22回全国大会(盛岡大会)は、これまでの全国大会の開催方式とは異なり、セッション方式で運営する79の分科会と発表者105名という大規模なものになりました。今日に至る全国大会の基礎を培ったものとして画期的な大会であったと評価されております。県外からの参加者が2300名をこえ、岩手県内の参加者400名を加えると2700名と発表されていますが役員や係を加えると3000名をこえる大会であったとも言われております。 3日間に渡る研修・研究スケジュールを11会場に別れた分科会から参加者が選択する新方式を採用したというだけではなく、本格的にコンピュータを使用して事務処理を始めた大会でもあり、その準備から運営までを滞りなく無事終了させ、大きな成果を収めたことは、岩手県SLAの優れた指導者と本会の総力を結集したからこそ実施できた大会であったと思われます。
(3)研究大会開催地の拡大・充実期
全国大会開催以降の昭和56年の第28回県大会から平成4年の第39回県大会までの計12回の県大会開催地はその約半分に当たる5回が盛岡で開催されておりました。特に、第30回県大会から第33回県大会までは、全国図書館セミナーを兼ねた県大会の開催もあり、4年間連続して盛岡が会場になっておりました。 平成5年には第26回東北大会が岩手県を会場に開催されることが決まり、盛岡以外では初めて、東北大会という大規模な大会の開催を西磐井地区が第40回県大会として引き受けることになりました。この開催の取り組みが西磐井地区の図書館教育の発展に大きな役割を果たすという意義あるものになりました。 学校図書館整備5カ年計画スタートしたばかりの年でもあり、1日目には小・中・高校の校種ごとに授業公開と読書・利用・管理運営の分科会が開かれ、2日目には「子どもと読書」という演題で井上ひさし氏の講演会が行われ500名にものぼる参加があり、学校図書館充実のための研修が行われました。 また、第42回を数える県大会も、県北地区での開催は、昭和46年の第18回二戸大会(福岡)の1度だけでしたが、25年ぶりに第43回県大会を二戸地区(一戸町)で開催したことに引き続き、昭和48年の第44回県大会も県北地区が連続で引き受け、久慈地区(種市町)としては初めて県大会を開催しました。 二戸大会では社会教育と関連させて一戸町をあげて大会に協力いただき、生涯学習とのかかわりでの読書指導を志向する研究大会となりました。作家の曽野綾子氏を招いての記念講演には800名もの聴衆が集まりました。大会全体では約1000名もの参加をいただいた大会となりました。 久慈大会(種市町)では、司書教諭問題や新図書館整備5カ年計画にかかわって関心が高まり、大きな問題意識として浸透した大会となったと同時に、この大会の実施により、久慈教育事務所管内の市町村組織が整備されて久慈地区SLAとして一つにまとまり、県SLAに加盟することになりました。
(4)社会情勢の変化と組織活動の改革期
学校週5日制の完全実施に伴い教育改革が行われ、「ゆとり」というキーワードのもとで組織活動の見直しが必要となってきました。平成10年度の理事会(総会)において、この課題について協議が行われ、平成12年以降は各地区持ち回りで開催する県大会を隔年実施と決定し、県大会が行われない年は県事務局が中心になって行う研修会を実施することが決められました。 この平成10年度の第45回大会は、平成12年度以降を見据えて盛岡で開催し、研究発表、セミナー、講演を内容とし、全国大会を縮小してアレンジした形での開催となりました。記念講演は、「朝の読書が奇跡を生んだ」で知られる朝読書の創始者である林公氏を迎えて行われ、この盛岡大会以降、朝読書の実践校が確実に増加することになりました。 平成11年度の第46回江刺大会以降、県大会は毎年の開催ではなくなり、隔年開催に変更されました。そのため、翌年の平成12年度には、第1回の図書館セミナーが盛岡の山岸小学校を会場に実施され、現在の県研究大会と図書館セミナーの隔年開催のパターンが定着しました。 県大会が隔年開催になった3回目の大会が平成17年度の第49回県大会(盛岡大会)で、第32回東北大会を兼ねて11月10日・11日の2日間に渡って開催されました。 この大会は、平成13年12月に『子どもの読書活動の推進に関する法律』が施行され、平成14年8月には『子どもの読書活動の推進に関する基本計画』が策定され、これを受けて岩手県でも平成16年3月に「いわて子ども読書プラン」が策定されるという、子どもの読書活動の推進を国や県をあげて取り組んでいこうとする読書推進の機運が盛り上がってきた時期に開催されたものでした。また、平成15年度に一部の学校に司書教諭が配置されてから3年目を迎えて、司書教諭の具体的な動きが見え始め、課題が明らかになってきた時期の研究大会でした。 児童生徒の主体的な学習活動や読書活動を充実させるため、この大会では、学校間の連携を中心に、家庭や地域との連携も含めた司書教諭同士のネットワークの構築と、それを生かした図書館機能の活性化、図書資源の共有的活用についての研究提案や授業公開が校種別に同じ松園地区内の小・中学校で行われました。また、幼・小・中連携ということで、地区内の幼稚園にも読書活動を公開していただき、高校部会と合わせて450名をこえる参加者がありました。また、全国SLAからの基調報告や重松清氏の記念講演があり、多くの成果を上げることができました。 平成17年7月には「文字・活字文化振興法」が成立し、この第8条では「学校教育における言語力の涵養」として『司書教諭や担当職員の人的体制と資料の充実や情報化の促進等の物的条件の整備に必要な施策を講ずるものとする』と明示されており、国や地方公共団体の責務や基本理念等が明らかにされています。これに対応した研究・研修が今後の課題として、県SLAとしても取り組むための体制作りや研究団体としての活動の在り方を探っていかなければなりません。更には、少子化に伴う教職員の配置数の減少に合わせて、事務局体制の強化と事業部の活性化を図る必要もあり、多くの先輩諸氏が築き上げてきた岩手県SLAの活動を維持・発展させていくためにも、事務の省力化・効率化と同時に情報の迅速で正確な伝達にも努めていかなければならないと考えているところです。
本に親しむ機会をつくり、読書の楽しさ、すばらしさを体験させ読書の習慣化を図ること、また、より深く読書し、読書の感動を文章に表現することを通して豊かな人間性や考える力をはぐくむことをめざして岩手県SLAは読書活動を推進しております。この趣旨を具体化する事業として昭和30年から始まった青少年読書感想文コンクールは第51回(平成17年度現在)を数え、本県も代表作品を全国コンクールに応募し、ほぼ毎年上位入賞を果たしています。県SLA50年記念誌に掲載されたコンクールの記録以降ではっきりと分かっているだけでも、昭和58年の第29回から平成17年の第51回までの計23回における岩手県の代表作品の全国コンクールの上位作品受賞暦は以下の通りになっています。
【最優秀作品】 |
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内閣総理大臣賞 |
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第29回、第46回(小学校の部・中学校の部ダブル受賞)、第49回 |
【優秀作品】 |
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文部科学大臣奨励賞 |
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第34回 |
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毎日新聞社賞 |
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第29回、第32回、第35回、第40回、第45回、第46回、第48回 第49回、第50回、第51回 |
【優良作品】 |
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全国SLA会長賞 |
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第30回、第31回、第32回、第35回、第36回、第37回、第38回、第41回、第42回、第43回、第45回 |
この成果は、本県児童生徒の読書活動の深まりと指導に携わった関係者の熱意により長い間に培われた歴史と伝統による感想文の質の高さを示しているものではないかと思われます。また、このコンクールを支えている各支部の募集・審査システムがしっかりと確立されていることによるものと関係各位のご尽力に敬意を表するものであります。
上記の感想文コンクールとは別に、平成11年度に新設された『読書推進大賞』には、20年以上にも及ぶ地道な読書を広める活動が評価され、宮古市の山口小学校が選ばれるという輝かしい成果も収めております。
また、平成元年から始まった読書感想画コンクールにも第1回から応募を始め、今年度で第18回を迎えます。感想文コンクールほどの取り組みが全県的に浸透してない状況にあります。しかし、年々質的に向上の兆しが見えてきております。
読書感想文コンクールと読書感想画コンクールという、この2つの事業を一つの核として読書活動の推進に寄与していきたいと考え、機能的な組織作りや研究団体としての役割の見直しや事業の精選・事務の効率化を図りながら実践して参りたいと存じます。
(岩手県学校図書館協議会50周年記念誌「迎風」を加筆・修正したものです。)
文責:岩手県学校図書館協議会事務局長 阿 部 悟 |
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